退職後の1年を振り返って

FIRA60

60歳の誕生日を迎えるおよそ4年前から、「自分はいつまで会社員を続けるのだろうか」と、
ふと立ち止まって考えるようになりました。
明確なきっかけは特になかったのですが、定年がだんだんと現実的なものとして
視野に入ってきたことが大きかったのだと思います。

当時の私は、参加して3年ほどになるプロジェクトでプロジェクトリーダーを務めていました。
朝から晩まで、起きている時間のほとんどを仕事のことが頭から離れない日々。
忙しい毎日でしたが、不思議と「苦しい」という感覚はなく、
むしろ大きなやりがいを感じていました。
それでも「この生活をずっと続けることはできないだろう」という思いが、
心の片隅に少しずつ広がっていったのです。

会社には60歳から65歳までの雇用延長制度がありました。
しかし制度上、60歳を過ぎると給与は半分以下に減ってしまいます。
その分、業務の負荷も軽くなると説明されていましたが、私は自分の性格をよく知っています。
どうせ任された仕事以上のことを全力でやってしまうに違いない。
そう考えると「給料が減ったのに仕事量は同じ」という未来が目に浮かびます。

そこで私の意識は「60歳で区切りをつけて、本当に退職して生活できるのか」
という方向にシフトしていきました。

当時、特に几帳面に資産管理をしていたわけではありません。
しかし、マネーフォワードという便利なツールに口座や資産の情報を入力していたので、
年間の生活費など大まかな全体像は掴むことはできていました。

次のステップとして、公的年金についても調べ始めました。
「ねんきんネット」を使い、受給開始年齢を変えた場合にどれくらいの
年金がもらえるのかシミュレーションを実施。
受給額のイメージを得ることで、ようやく「退職後の暮らし」というものを
数字で考えられるようになりました。
こうしてまずは「資産と年金の現状把握」という第一歩を踏み出したのです。

そんな矢先、仕事はさらに忙しさを増していきました。
肩の凝りや背中の痛みが慢性的に続くようになり、整体にも通いましたが改善は限定的。
体が少しずつ悲鳴を上げているのを実感しました。

「このまま突っ走っていいのだろうか」
心の声が強まったのは、2023年7月、57歳のときでした。
定年まで2年半。いよいよ真剣に「退職後のライフプラン」を考える時期に入ったのだと
自覚しました。
資産や年金の数字だけでなく、自分の健康ややりたいこと、家族との時間――。
さまざまな要素を照らし合わせながら「FIRE60」を現実のものにするための
検討が始まったのです。

今回の記事では、FIREを決断するまでの経緯を振り返ってみました。
次回はもう少し具体的に「FIRE60後の資産状況」について書いてみようと思います。
実際にどのような資産をベースにスタートしたのか、公的年金や退職金とのバランス、
そして生活費との兼ね合い。
これらをどう整理していったかを、実体験としてまとめていく予定です。