映画 フロントライン

映画

今日はイオンシネマで映画『フロントライン』を観てきました。


物語の舞台は、2020年初頭、世界中を震撼させた新型コロナウイルスが
日本に初めて本格上陸した際の、あの「ダイヤモンド・プリンセス号」。
感染者を乗せたまま横浜港に停泊し続けたクルーズ船を舞台に、
その数週間の緊迫した出来事が描かれます。
映画は、ニュースでは断片的にしか知ることのできなかった“現場のリアル”を
克明に映し出していました。


中心となるのは、感染症対策の最前線で指揮をとるDMAT(災害派遣医療チーム)の
責任者を演じる小栗旬。
理想と現実、命の重みと制度の限界の狭間で苦悩する彼の姿が非常に印象的でした。
医師としての倫理観、そして組織人としての立場の狭間で揺れ動く姿に、
人としての弱さと強さが交錯しており、観ていて胸が締めつけられる思いでした。


一方、船内でクルーや乗客たちを支え続けるリーダー役の窪塚洋介は、
まさに現場に根ざした“生きたリーダー像”を体現していました。
外部との連絡が限られる中、目の前の人々を守るという使命に突き動かされる彼の言動は、
フィクションというよりもドキュメンタリーを見ているかのようなリアリティがあり、
言葉の一つ一つに重みを感じました。


さらに、現場と本部の橋渡し役として船に常駐する厚労省の若手官僚を演じた
松坂桃李の存在も印象的です。
彼の立場は決して楽ではありません。現場の混乱、組織内の温度差、世間からの批判…。
そうした中でも冷静に、かつ誠実に対応を重ねていく姿に、「本当にこういう公務員がいてくれたら」と思わされる、希望のようなものを感じました。


物語の中では、度々「誰が責任を取るのか?」という言葉が飛び交います。
非常時においてもなお、責任逃れや立場の保全を最優先しようとする構造に、
やるせなさを感じつつも、そんな空気を打ち破ろうとする現場の人々の
勇気ある行動に何度も心を打たれました。


乗客やクルーたちの不安と孤独、人間としての尊厳を守ろうとするスタッフたちの姿が交錯する中で、気がつけば涙している自分がいました。
単なる医療ドラマでも、政治ドラマでもなく、「人が人としてどうあるべきか」を問いかける
力強い作品だったと感じています。


観終わった後、じんわりと心の中に残るものがありました。
この作品を観て、自分がもし同じような状況に置かれたら、果たしてどう行動できるのか…。
そんな問いを投げかけられた気がします。

星の数で言えば、迷いなく★★★(星3つ満点)です。
静かに、でも確かに心を揺さぶる一本でした。興味のある方は、
ぜひ劇場でご覧いただきたいと思います。
特にあの出来事をリアルタイムで経験した私たちにこそ、観てほしい映画です。