映画 おーい、応為

映画

今日は「おーい、応為」を見にいきました。
以前「ぜんぶ北斎のしわざでした展」を観に行ったときから気になっていた作品で、
ようやく映画館で観ることができました。
あの展覧会で感じた“北斎と応為の絆”や、芸術の裏にある人間的な葛藤が
どんな形で映画化されているのか、楽しみにしていました。

物語の中心となるのは、北斎(永瀬正敏)とその娘・応為(長澤まさみ)の親子関係。
江戸の町を舞台に、芸術という共通の世界に生きる二人が、
互いを認めながらも反発し合う日々を淡々と描いています。
大きな事件や派手な展開があるわけではなく、筆を走らせる音や風の音、
そして静寂の中に流れる時間の重みがじわりと心に染みてくる作品でした。

特に印象的だったのは、音楽と映像の美しさ。
ギターとトランペットを中心にしたサウンドが、どこか現代的でありながらも、
江戸の情緒と不思議な調和を見せていました。
田舎の風景や富士山のシルエットが映るたびに、まるで一枚の絵を見ているようで、
思わず息をのむほど。
画面の外から聞こえてくる江戸の町人たちのざわめきや、遠くの鐘の音もまた、
物語の余韻を深めていました。

応為を演じる長澤まさみの存在感も見事でした。
彼女が纏う雰囲気は、いわゆる“女性らしさ”というよりも、どこか中性的で凛とした美しさ。
筆を取る指先の繊細な動きや、物思いにふける横顔からは、
芸術にすべてを賭けた人物の気迫が伝わってきました。
一方の北斎役・永瀬正敏は、年老いた父としての威厳と孤独を見事に演じており、
時折見せる破天荒さの裏に、娘への複雑な愛情が滲み出ていました。
二人が言葉少なに向き合う場面には、まるで絵師とその影が対話しているような
静けさと緊張感がありました。

全体としては非常に静かな映画で、展開もゆったりとしています。
派手さはありませんが、最後まで観終えたあと、じんわりと心が温まるような、
そして少し切ない余韻が残る作品でした。
芸術とは何か、親子とは何か——そんな問いが観客の中に静かに浮かび上がってきます。

P.S.
今日は偶然にも、映画館でポップコーンのおまけ付きサービスがありました。
ちょっとしたことですが、こういう小さな幸運があると、
映画鑑賞の満足度がぐっと上がりますね。
美しい映像と音楽、そしてほんのり甘いポップコーンの香りに包まれた、
心豊かな日になりました。